ダイエットで挫折しやすい人の3つの特徴
外来で患者さんと接していると、ダイエットがうまくいかないと悩んでいる人にはいくつかの傾向があることがわかってきました。
具体的には、次の3つです。
1ダイエットに対して、主体性がなく他力本願(誰か何とかして!と思いがち)
2刹那的で、常に新しい情報に踊らされている
3過去・現在・未来のことを分析したり考えたりするのが苦手
これらの要因によって、「メディアで紹介されている効果がありそうな方法に飛びつくも、続かず挫折。もしくは一時的にやせてもリバウンドして、その後はなかなかやせられない」といった状態になっている人が非常に多いのです。
「先生、糖質制限とか、◯◯ダイエットとか、ハッキリ言って、僕たちはすごく扱いやすいんですよ!電波に乗せやすい。単純で目を引くんです」
こんな話を先日、あるテレビ番組のプロデューサーがしてくれました。
外来に来る患者さんも、「最近、太ってたほうが健康っていう記事を雑誌で見ました」「糖質制限がいいというから○○をしてみました」といったことをお話しされます。
先日、80歳になる私の父がスマホを片手にインターネット検索で調べものをしている光景を目撃してとても驚いたのですが、それくらい情報は誰にとっても身近なもので、目をつぶっていても矢や継つぎ早ばやに「目新しい」「風変わり」な情報が飛び込んで来ます。
たとえばこんな患者さんがいらっしゃいます。
「先週末のテレビ番組で『プチ断食が今大ブーム!』とタレントさんが言っていたので、私も3日間断食をしてみたんです。でも、何も食べないのもつらいから、こんにゃくゼリーとりんご1つ、それにミネラルウォーターだけ飲みました」
……その結果、
「2キロも減ったんです!」
ととても喜ばれていました。
ただ、これは冷静に考えないといけません。
この患者さんの年齢と身体活動レベルから割り出される1日あたり必要なエネルギーは2000キロカロリー、3日で6000キロカロリーです。医学的には、体重を1キロ落とすのに必要なのは7000キロカロリーの消費だとされています。となると、3日間何も口に入れなかった場合、計算上で減らすことができる体重はせいぜい0・8キロ程度。
プチ断食をしたところで2キロも3キロも脂肪や筋肉が減るわけがありません。
では、何が減ったのかといえば、水分です。
そもそも体重とは、体脂肪、筋肉、皮膚、内臓、胃や腸管などの中の便のもとになる食物残ざん渣さ(食物のカス)、そして水分などを足し算したものです。
ですから、500ミリリットルのペットボトルのお茶を1本飲み切れば、見かけ上はおおむね0・5キロ体重が増えることになります。一方で、不ふ感かん蒸じょう泄せつと言われる毛孔(毛あな)からは1日あたりおおむね1リットル近くの水分が蒸発しています。
実は、「1日で体重が2キロ落ちた」などの急激な減量は、ほとんどの場合、水分が不足したサインです。また逆に「体重が急に2キロ増えた」などは、むくみによる場合が多いのです。
自己流でダイエットを始めた方の多くが、「めまいがする」と訴えられるのですが、これはほとんどの場合が水分不足によるものです。
このように、テレビでよく紹介されているようなダイエット法は非常に効果が高そうに見えるものも多く、やることも明確で、簡単にできそうに思えます。
さらに極端な分、「ダイエットしている感」も得られるので、ついトライしてしまいがちなのですが、こうしたにわか仕込みのダイエットは、多くの場合、長くは続きません。
しばらく続いたとして、目標体重になったあたりで油断を始め、急激なリバウンド、というケースがあとを断ちません。
少し厳しい言い方をすれば、小手先のダイエットに食いつくばかりで、本人の生活習慣やものごとに対する考え方は一切変わっていないのです。
そのため、太ってやせての繰り返しで、結果的に病気を招きやすい体をつくってしまっています。
本書でこれからお伝えするダイエット方法では、そのようなイタチごっこのようなダイエットにはまるのではなく、自身の生活を見直し、ものごとの捉え方を変え、「人生の質」が高まるようなやせ方をしましょう、という提案をしています。
ただ体重を落とすということではなく、また、極端でつらいダイエット方法ではなく、やせることを楽しみながら、人生を充実させていきましょう、とそんな提案です。